日本映画の名作ベスト(21世紀)

21世紀の日本映画名作ベスト

21世紀の日本映画(邦画)の名作のベスト・ランキングです。

トップ1011~20位21~30位

トップ10
順位 作品名、公開年、動画 解説・感想・評価
千と千尋(ちひろ)の神隠し

(2001年)
宮崎駿(はやお)監督。米国アカデミー賞アニメ賞など数々の国際的な映画賞に輝いた。 アニメ、実写の枠を超えて、世界の映画史に残る名作として称えられている。

主人公は、10歳の少女・千尋。両親と新居に移る途中で、道に迷い、別世界に入り込んでしまった。テーマパークの残骸(ざんがい)らしい。そこで両親は、魔女によって豚にされた。 千尋は魔女の側近である少年に助けられ、お風呂屋さんの見習いとして働くことになる。

その後、千尋は両親を助けるために試練の旅に出る。 苦労をする中で千尋は成長し、たくましい「生きる力」を身につけていく。 けなげな生き方が共感を呼んだ。

日本の神々やグロテスクな生き物、妖怪などが入り乱れる独特の世界が創造されている。
万引き家族

(2018年)

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是枝裕和監督。
たそがれ清兵衛

(2002年)

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山田洋次監督。

幕末に生きる貧しい下級武士とその家族とのふれあい、友人の妹との恋模様などを描く人間ドラマ。

苦難の時代に生きる人々の心象風景をすくい取る繊細な演出が圧巻。色遣い、殺陣の構図など、洗練された映像の連続。 「大切なことだけを大切にしたシンプルなストーリーに、泣いてしまった」(当時19歳の宇多田ヒカル)など、世代を超えて絶賛された。

「男はつらいよ」の巨匠・山田監督にとって通算76作目の作品。原作は藤沢周平氏の同名小説と「祝い人助八」「竹光始末」。

幕末の庄内・海坂藩の貧乏下級藩士清兵衛(真田広之)は、老母と幼い娘2人を抱え、たそがれ時になると内職のために寄り道もせずまっすぐ自宅に帰る毎日。そんなある日、突然藩から剣の達人を斬ることを命じられ、清兵衛に思いを寄せる幼なじみの朋江(宮沢りえ)に別れを告げて戦いに赴く。

山田監督のデビュー作は61年の「二階の他人」。国民的人気シリーズ映画「男はつらいよ」全48作や「学校」シリーズのほか「幸福の黄色いハンカチ」「虹をつかむ男」などが代表作。
おくりびと

(2008年)

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滝田洋二郎監督。
パッチギ

(2005年)

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井筒和幸(いづつ・かずゆき)監督。 在日朝鮮人と日本人の高校生たちの争いと恋愛を描いた。青春群像劇。 2000年代の日本映画界に新しい風を巻き起こした映画会社「シネカノン」(2010年に倒産)の代表作の一つ。

高度経済成長期の1968年の京都が舞台。 左翼学生運動が盛んだった時代である。 グループサウンズが流行していた。

平凡な高校生・康介(塩谷瞬)が主人公。一目ぼれの相手は、朝鮮高校のキョンジャ(沢尻エリカ)だ。 その兄・アンソン(高岡蒼佑)は朝鮮高校の番長だ。社会的背景を織り込みながら、朝鮮学校と日本人学校の生徒たちたちの姿を描く。

大ヒットしたザ・フォーク・クルセダーズの伝説的名曲「イムジン河」が全編に流れる。 朝鮮半島分断の悲劇を歌った曲だ。 当時、発売中止となった。 ストーリーと歌詞がシンクロする。 音楽は、ザ・フォーク・クルセダーズの加藤和彦氏が担当した。

「パッチギ」はハングルで「頭突き」を意味する。在日問題を真剣にとらえながら、泣き笑いもふんだんに盛り込んだ。恋物語を柱に、実際にあったバス横転や鴨川決闘など抗争のエピソードや、グループサウンズ、毛沢東語録、フリーセックスといった当時の風俗、社会現象も盛り込んだ。

シネカノンと井筒監督のコンビは、本作の前にも、「ゲロッパ!」「のど自慢」というヒット作を生み出していた。

1時間59分。
誰も知らない

(2004年)

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是枝裕和監督。是枝監督の4本目の劇場用映画。 母親が姿を消し、アパートの一室に子供たちだけが残された。東京都内の2DKのアパート。 父親の違う4人の子供だ。 彼らは自分たちだけで生きようとする。 子供を取り巻く現代社会と、子供たちの内面を描いた。

1988年に実際にあった事件を基に、時代を現代にして、自由な発想で作られた。

テーマや子供たちの演技が大絶賛された。オーディションで選ばれた子供たちの、即興的な自由な演技を生かされたという。 カンヌ国際映画祭で、主役の少年を演じた中学3年生、柳楽優弥(やぎら・ゆうや=当時14歳)が男優賞に選ばれた。 14歳での男優賞は史上最年少記録だった。また、日本人の俳優部門での受賞は初めてだった。

撮影は2002年の秋から2003年の夏まで、四季の変化を取り込んで行われた。
フラガール

(2006年)

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李相日(り・そうじつ、イ・サンイル)監督。 シネカノン製作。

厳しい現状から抜け出すためにフラダンスに夢をかける女たちの熱い物語だ。 奇をてらわないオーソドックスな名作。 泣き笑いがたっぷり。世代を超えて楽しめる。そして、元気をもらえる。

1965年の福島の炭鉱の町が舞台。 石油エネルギーの普及で、石炭の需要げ減少し、 この町の炭鉱も閉鎖が迫っていた。

打開策として、炭鉱会社は坑内からわき出る温泉を生かしたリゾート施設の建設を決める。 テーマは「ハワイ」。そして、目玉はフラダンスショーだ。

地元の娘たちに踊りを教えるため、東京から訳ありのダンサー平山まどか(松雪泰子)が招かれる。 家族や仲間からも冷たい目で見られるなか、紀美子(蒼井優)、小百合(山崎静代)ら素人の炭鉱娘たちが特訓を重ねる。

福島県いわき市で現在も営業する「スパリゾートハワイアンズ」(当時:常磐ハワイアンセンター)の誕生の実話がモデルとなっている。 いわき市にあった「常磐炭鉱」は、本州最大の炭鉱として、かつて日本経済を支えていた。 ハワイ施設は、その起死回生策として期待された。

李相日監督(リ・サンイル)は当時32歳の若手だった。 在日朝鮮人3世として新潟に生まれた。映画の専門学校の卒業作品 「青~chong~」(1999年)が、「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリを受賞。 非凡な才能を見せた。以来、生み出す作品が注目を浴びた。 フラガールで日本の映画賞を総なめにした。
蜜蜂と遠雷(みつばちとえんらい)」

(2019年)

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石川慶監督。
トウキョウソナタ

(2008年)
黒沢清監督。香港、オランダとの合作。

リストラされた東京の中高年サラリーマン男性と、その家族の物語。 家父長的な価値観が揺らぐなかで、家庭の絆や葛藤が描かれる。 それまでホラー映画で世界的に有名だった黒沢監督が一般家庭を題材にし、新鮮な印象を与えた。 正確で完ぺきなショットや、キャストたちの演技が称賛された。

男性はリストラされたことを家族に言えない。 父親として家族には虚勢を張りながらも、もろさや弱さの間で揺れる。

いつも孤独な母(小泉)、米軍入隊前の長男、父に伏せてピアノを習う二男。 家族がバラバラの方向へと向かいだす。

香川照之(当時42歳)、小泉今日子(当時42歳)が夫婦役で共演した。 オーストラリアの脚本家マックス・マニックスの原作で、黒沢監督が脚本を書き上げた。

とりわけ海外で高い評価を得た。 カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で大賞に次ぐ2番目の賞である審査員賞を受賞した。 第3回アジア・フィルム・アワードでは作品賞、脚本賞の2冠に輝いた。 インドで行われた「アジア・アラブ映画祭」では大賞を受賞した。
10 座頭市(ざとういち)」

(2003年)
北野武(ビートたけし)監督。北野監督の11作目であり、初めての時代劇。勝新太郎さん(享年65)でおなじみの名作時代劇のリメーク。 1998年に亡くなった世界的な巨匠・黒澤明監督のオマージュでもある。

2003年のヴェネチア国際映画祭で監督賞(銀獅子賞)を受賞した。 さらに、「観客賞」「オープン2003特別賞」「フューチャー・フィルム・フェスティバル・デジタル賞」も獲得し、計4冠を成し遂げた。 演出力や構成力が高く評価された。

北野監督のそれまでの過去の作品は、説明的な描写が少なく、理解力や想像力が必要だった。これに対して、本作はテンポのいい娯楽作品になった。これによって客層も広がった。

北野作品はそれまで、海外での高い評価が客足に結びつかず、興行面で苦戦が続いていた 興行収入は2001年の「BROTHER」の9億円が最高だった。 ベネチア国際映画祭でグランプリに輝いた1998年(受賞は1997年)の「HANA-BI」は6億円止まりだった。

こうしたなか、座頭市は国内興行収入28億円を記録した。北野作品としては飛び抜けた大ヒットになった。

トップ1011~20位21~30位

11~20位
順位 作品名、公開年、動画 解説・感想・評価
11 ハウルの動く城

(2004年)
宮崎駿監督。
12 バトル・ロワイヤル

(2000年)

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深作欣二(ふかさく・きんじ)監督。中学生同士の殺し合いを描いた。過激な暴力映画。

物語の舞台は、政府によって「BR(バトル・ロワイヤル)法」という法律が制定された未来の日本。 この法律では、全国の中学3年生から無作為に学級を選び、最後の1人になるまで戦わせることになった。 そして、選ばれたクラスの42人の生徒たちが、最後の一人になるまで殺し合いをするように仕向けられ、バトルを始める。

「仁義なき戦い」シリーズで知られる深作監督にとっては、60本目の映画。事実上の遺作となった。

出演は山本太郎、柴咲コウ、ビートたけしら。

減さ億は、高見広春氏の同名小説。この小説は第5回日本ホラー小説大賞の最終選考に残ったものの、審査員の間で物議を醸し入選しなかった。
13 告白

(2010年)

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中島哲也監督。 自分の娘を殺された女性教師が、生徒への復讐(ふくしゅう)に走る。ミステリー映画。完成度が高い。優れた演出。

女性教師を演じるのは、松たか子。 この女性教師はシングルマザーだった。 ある日、学校の教室で突然、受け持ちの生徒に向け、「教師を辞めます」と告げる。 彼女は数カ月前、一人娘を校内で亡くし、警察では事故死とされていた。 しかし、彼女は生徒に対して「娘は事故死ではない。このクラスの生徒に殺された」と告白。 少年法に守られた犯人に自ら罰を下すと宣言する。

物語は、事件に関係する生徒や教師、保護者が順に思いを告白していく形で進む。彼らが告白するごとに、新たな事実が明らかにされるだけでなく、内に秘めた悪意が次々とあらわになり、教師と生徒との狂気と恐怖に満ちたバトルが繰り広げられていく。

原作は、湊かなえの同名小説。本屋大賞を受賞した。

殺傷や暴力的ないじめなどの残酷なシーンが多い。映倫の指定「R15」となり、15歳未満は劇場で見ることができなかった。

中島哲也監督は「下妻物語」「嫌われ松子の一生」などでも知られる異才。 本作では、生徒役の37人とも話し合いを重ね、集団に埋没しない一人一人のキャラクターを創造したという。

松たか子は表情を抑え、復讐に走る教師の冷酷さを際立たせた。 松以外の出演は岡田将生、木村佳乃ほか。
14 GO

(2001年)

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行定勲(ゆきさだ・いさお)監督。日韓合作映画。

主人公は、在日韓国人の少年。 日本人少女との恋愛、父親との葛藤(かっとう)、友人の死などを通して成長していく物語。 差別や偏見に悩み苦しみながら、自らのアイデンティティーを確立していく。

高校3年の杉原(窪塚洋介)は在日韓国人。偶然知り合った美少女、桜井(柴咲コウ)と恋に落ち、国籍を明かさぬまま、デートを重ねるが、自分に決着をつけるためついに告白する。

原作は、小説家・金城一紀(かねしろ・かずき)の小説。 前年に直木賞を受賞していた。 金城氏の半自伝的な要素もある。

行定監督にとって初めてのメジャー作品だった。 この3年後に、「世界の中心で、愛をさけぶ」も大ヒットさせた。

主演の窪塚洋介は、アクションスター的なしなやか動きを披露。その一方で、破天荒な振る舞いと裏腹に、ルーツと向き合う悩み、恋に落ちた切なさをリアルに表現した。

明るくマイペースな主人公の母を大竹しのぶ、強烈な個性で息子を導く元ボクサーの父を山崎努が演じる。
15 シン・ゴジラ

(2016年)
総監督:庵野秀明、監督・特技監督:樋口真嗣。
16 君の名は。

(2016年)

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新海誠監督。
17 ゆれる

(2006年)

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西川美和(にしかわ・みわ)監督の長編2作目

ある事件をきっかけに、兄弟が葛藤(かっとう)する行方を描く。俳優オダギリジョー(当時29歳)が弟を演じた。 この主人公は、色気たっぷりのモテ男。人気カメラマン。好きなように生きているように見えるが、人生をうまく渡り切れない。

西川監督は2003年、宮迫博之主演で日本の典型的な家庭の崩壊劇をシニカルかつブラックユーモアで描いた映画「蛇イチゴ」で監督デビュー。ヨコハマ映画祭新人監督賞などを受賞し、一気に注目を集めた。

西川美和:1974年(昭49)7月8日、広島県生まれ。早大卒。学生時代から映画製作を志し、大学在学中に是枝監督に才能を見いだされて「ワンダフルライフ」(99年)にスタッフとして参加。03年「蛇イチゴ」で監督デビュー。短編作品は、若手監督のオムニバス作品集「female」(05年)の「女神のかかと」がある。
18 あゝ、荒野(こうや)~前篇/後篇

(2017年)

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岸善幸(よしゆき)監督。 肉体と感情が激しくぶつかりあう青春映画。熱いスポーツ映画。群像劇でもある。前篇と後篇合わせて約5時間という長さだが、飽きない。

1960年代から1970年代にかけて、演劇界や文学界を席巻した寺山修司。 その寺山が、唯一のこした長編小説が「あゝ、荒野」(1966年)だ。

小説の舞台は、50年前の東京・新宿だ。 これを2021年の近未来という設定で、映画化した。 東京五輪の1年後の混迷する日本を舞台にしている。

少年院から出てきたばかりの不良の新次(菅田将暉)と、引っ込み思案で他者との関係を築けなかった建二(ヤン・イクチュン)が出会う。 2人は同じボクシングジムで、プロボクサーへの道を歩んでいく。 ネオンに彩られる新宿の街と、登場人物たちの孤独を「荒野」に仕立てた。

主演は、菅田将暉(すだ・まさき、公開当時24歳)と、韓国の俳優ヤン・イクチュン(公開当時42歳)。 この2人の演技が大絶賛され、2人とも多くの賞を獲得した。

役のため、細身の菅田は撮影の半年ほど前からボクシングのトレーニングを始め、体重を約10キロ増やした。 逆にヤンはジョギングなどで10キロほど減量した。

ボクシングのシーンはド迫力。

後篇は、前篇の2週間後に劇場公開された。
19 仄(ほの)暗い水の底から

(2002年)

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中田秀夫監督。ホラー映画。
20 海街diary(うみまちダイアリー)」

(2015年)

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是枝裕和監督。 静かな家族ドラマ。 優しさ、穏やかさに満ちている。

鎌倉(神奈川県)に住む三姉妹。 いずれも既に社会に出て、働いている。 湘南の海の近くにある古い木造の家で、3人だけで暮らしている。 父親は15年前に家を出て行った。 母親も遠方に引っ越しており、いない。

しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか)。 自由奔放な次女・佳乃(長沢まさみ)。 マイペースな三女・千佳(夏帆)。

父親が亡くなったとの連絡が入り、 葬儀に出席する。 そこで、腹違いの妹と初めて出会う。中学生のすず(広瀬すず)だ。 父親の死去で、この妹は身寄りがなくなった。 そこで、鎌倉の家に招き、 一緒に暮らすことになる。

それぞれに複雑な思いを抱えつつも、互いに少しずつ絆をつむいでいく。

是枝監督は、吉田秋生(あきみ)さんの同名漫画を読み、映画化を熱望したという。 「淡い水彩画のような作品」(是枝監督)となった。

確かに傑作。ただ、何でもかんでも「父親」に結びつけ過ぎではないだろうか(?)。

トップ1011~20位21~30位

21~30位
順位 作品名、公開年、動画 解説・感想・評価
21 カメラを止めるな!

(2017年)

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上田慎一郎監督。
22 半世界

(2019年)
阪本順治監督。
23 ユリイカ

(2001年)
青山真治監督。
24

(2000年)
阪本順治監督。

トップ1011~20位21~30位


映画好きが選ぶ日本映画ベスト150(1988年、文春文庫)

映画が好きな芸能人、著名人を含む372人にアンケートを行い、日本映画ベスト150を選出しました。文春文庫が、1988年に実施。アンケートでは、1位から10位までの映画を選んでもらい、1位を10点、2位を9点・・・1位を1点として集計しています。1位は「七人の侍」、2位は「東京物語」、3位は「生きる」となっています。昭和の名作が上位を占めています。

順位 作品名
(公開年)
監督 ストリーミング動画配信
1位 七人の侍
(1954年)
黒澤明 Amazonビデオ→
2位 東京物語
(1953年)
小津安二郎 Amazonビデオ→

U-NEXT→

Hulu→
3位 「生きる」
(1952年)
黒澤明 Amazonビデオ→
4位 「羅生門」
(1950年)
黒澤明 Amazonビデオ→

U-NEXT→

Netflix→
5位 「浮雲」
(1955年)
成瀬巳喜男 Amazonビデオ→
6位 「飢餓海峡」
(1965年)
内田吐夢 Amazonビデオ→

Hulu→
7位 「二十四の瞳」
(1954年)
木下惠介 Amazonビデオ→

Hulu→
8位 「無法松の一生」
(1943年)
稲垣浩
9位 「幕末太陽伝」
(1957年)
川島雄三
10位 「人情紙風船」
(1937年)
山中貞雄


東映が映画配信サービス(ムービーサーカス)

2004年3月2日、読売新聞、東京夕刊

映画会社の東映は、劇場公開邦画を配信するサービス「ムービーサーカス」を開始した。好きな作品を選んで視聴できるビデオ・オン・デマンド方式で本編をストリーミング配信するほか、作品情報、予告編なども公開、「ネットシネコン」を目指す。

特撮BBではテレビ番組を配信

東映では2002年夏から、テレビ向け特撮作品を配信する「特撮BB」を開始、2003年5月からはビデオ映画やお色気作品を集めた「おとなの映画BB」を運営している実績がある。

飢餓海峡、仁義なき戦い、銀河鉄道999など

今回は公開メジャー作品ばかりをそろえ、子供から年配までを視野に入れた一般向けサービス。「飢餓海峡」「仁義なき戦い」「鬼龍院花子の生涯」など名作からアニメ「長靴をはいた猫」「銀河鉄道999」まで、「現代劇」「時代劇」「特撮」「アニメ」の4ジャンルをそろえる。開始時は30作品を用意、2003年4月以降は毎月10~20作品を追加予定。

視聴料金は1作400円

「ワンピース」劇場版のダイジェストを無料配信

視聴は1作400円(消費税込み)で、7日間以内なら繰り返し見られる。3月中は「ワンピース」劇場版の1作~3作のダイジェストを無料で配信する。

サービスは当面、NTT東日本のブロードバンドユーザー向けだが、東映では順次拡大の意向で、「月6~8万アクセスを目指したい」としている。

「日本漫画映画の全貌」展

2004年12月28日、神戸新聞、朝刊

90年間のアニメの名場面

宮崎駿監督の新作アニメーション映画「ハウルの動く城」が公開され、話題を集めている。2003年は宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が米アカデミー賞の長編アニメ賞を得るなど、日本のアニメはいまや世界に注目される文化に育ったが、そこに至るまでには90年近い歴史の積み重ねがある。神戸市の大丸ミュージアムKOBEで2004年12月29日から開かれる「日本漫画映画の全貌(ぜんぼう)」展では、大正期に始まる漫画映画の流れを3つの時代に分けてたどる。

アニメの父・政岡憲三「くもとちゅうりっぷ」
戦前の白黒短編

戦前の白黒短編作品時代では、アニメの父・政岡憲三が脚色や演出を担当した「くもとちゅうりっぷ」(1942年)の場面や、手探りで技術を確立した当時の作業風景を紹介する。

日本初のカラー長編漫画映画「白蛇伝」
森康二の「長靴をはいた猫」

戦後のカラー長編作品時代は、東映動画の名作が中心。日本初のカラー長編漫画映画「白蛇伝」(1958年)の原画や、アニメの神様と称される森康二が描いた「長靴をはいた猫」(1969年)のキャラクターシートなどを展示する。

東京ムービーやジブリ

最後は、伝統を受け継いだ東京ムービーやスタジオジブリの時代。宮崎駿による「パンダコパンダ」(1972年)「風の谷のナウシカ」(1984年)「となりのトトロ」(1988年)「もののけ姫」(1997年)「千と千尋の神隠し」(2001年)のイメージボードなどが並ぶ。

また、高さ約3メートルの「ハウルの動く城」のオブジェや戦前の撮影台「マルチプレーン」も登場する。

懐かしい傑作から最近の話題作まで、記憶に残る名シーンともう一度出合えそうだ。

「どうぶつ宝島」などを盛り込んだ短編上映も

会場内のミニシアターでは、この展覧会のために作られた短編映画「まんがえいがはったつし」(11分)を上映する。「わんぱく王子の大蛇退治」(1963年)「どうぶつ宝島」(1971年)などを盛り込み、アニメ映画の楽しさと魅力を伝える。また会場の各所では、戦前の名作からジブリの人気作までの名シーンが流される。

大丸ミュージアムKOBEで開催

「日本漫画映画の全貌」展(神戸新聞社など主催)は2004年12月29日~2005年1月15日、神戸・元町の大丸ミュージアムKOBE(大丸神戸店9階)で開催。

入場は午前10時-午後7時半(12月31日は午後6時、最終日は午後5時閉場)、元日休館

一般800(600)円、大高生600(400)円(カッコ内は前売り、10人以上の団体など)、中学生以下無料

展示作品の例
  • 森康二が後年描いた「長靴をはいた猫」のペロのイラスト
  • 「風の谷のナウシカ」のイメージボード(宮崎駿)
  • 「ルパン三世 カリオストロの城」のイメージボード(宮崎駿)
  • 「となりのトトロ」のネコバスのイメージボード(宮崎駿)
  • 「わんぱく王子の大蛇退治」の1シーン
  • 「パンダコパンダ 雨ふりサーカス」のイメージボード(宮崎駿)
  • 「くもとちゅうりっぷ」の1シーン

見たい映画、ネットでゲット 配信サービス続々

2007年2月4日 読売新聞、東京朝刊

映画やアニメーションのインターネット配信サービスが本格化してきた。かつてはネットを脅威と見ていた映画会社も「守り」から「攻め」に転じた。ネット配信が新たな収益源になると見て専用ポータル(入り口)サイトを開設したり、携帯電話向けにアニメを配信するなど、積極的にネットを活用している。

DVDよりネット配信

ネット配信のメリットは、ビデオやDVDで発売するよりも製造コストが安く上がることだ。国内では、コストが引き合わずに、ビデオ化やDVD化されずに眠っている映画作品が多い。ネット配信では、こうした作品の再活用ができる。

東映ムービーサーカス

動画配信サイトで旧作配信

東映は、映画配信ポータルサイト「東映ムービーサーカス」を開設し、動画配信サイトを通じて約240本の映画を配信中だ。往年の時代劇など、DVD化されていない旧作を積極的に配信している。日活も「銀座の恋の物語」や「南国土佐を後にして」など100作品をネットで配信している。

ソニー・ピクチャーズ

洋画系のサービスは、新作が比較的早く配信されるのが特徴だ。ソニー・ピクチャーズでは原則、新作はDVDやビデオの発売から90日後にネットで配信している。

地上波、衛星放送などのテレビ放映が優先

一方、国内の映画会社の場合、邦画の新作なら劇場公開からネット配信まで3年程度かかるのが通常とされる。ネット配信までに出来るだけ多くの収益を上げようと、地上波や衛星放送などでテレビ放映されることが多いためだ。

松竹の「シネリエ」

松竹は2006年12月、映画配信ポータルサイト「シネリエ」を開設した。1作品について3500字程度の解説と豊富な写真で魅力を紹介する「映画のソムリエ」のようなサイトを目指すとしている。

ショウタイムで購入

視聴者は、シネリエで見たい作品を選び、このサイトとリンクしている「ショウタイム」などの動画配信サイトを通じて作品を購入する仕組みだ。

料金は1作品367円

シネリエは今のところ、高峰秀子主演の「二十四の瞳」や小津安二郎監督の「長屋紳士録」など16作品を用意している。料金は1作品367円で、購入後7日間は何度でも視聴できる。松竹は2007年末までに約100作品を配信する計画だ。

ディズニーが携帯向けに配信

携帯電話向けの配信も始まった。ウォルト・ディズニー・ジャパンは2006年9月から、NTTドコモの携帯電話向けにアニメを配信している。「ディズニークラシック短編集」など3作品を配信中で、2007年8月までに28話に増やす予定だ。アニメは1本が最長20分で、月額315円を支払えばすべての配信作品を何度でも視聴できる。

角川はNTTドコモと提携

角川グループホールディングスも携帯配信を狙って、NTTドコモと資本・業務提携した。今後、角川グループの映画やアニメの予告編もドコモの携帯電話向けに配信する予定だ。

野村総合研究所によると、映像配信市場は2006年度の181億円から11年度には950億円規模へと5年間で5倍以上に急成長する見通しだ。

映画館の興行収入

映画会社が作品のネット配信に力を入れ始めたのは映画館の興行収入やDVD販売額が伸び悩んでいるため。日本映像ソフト協会の調べによると、2005年のDVDとビデオの売上高は前年の98.8%と、2000年以降で初めて減少に転じた。映画の興行収入と入場者数は、2006年は好調だったものの、大ヒットが少なかった2005年は前年比で減少していた。

ブロードバンド(高速大容量通信)の普及で家庭のパソコンでもスムーズな動画が見られるようになったことも、映画会社のネット配信を後押ししている。