三上靖史

宇宙からのメッセージは、1978年のSF映画です。和製スター・ウォーズとも言われる作品で、1980年(第7回)サターン賞の最優秀外国映画賞にノミネートされました。
動画やDVD、評価、メカ、プラモデルにもなったリベア号、キャスト、東映制作の特撮テレビドラマ『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』の情報など。~(三上靖史)

作品紹介「宇宙からのメッセージ」

常に意欲的な活動を続けていた深作欣二監督によるSF超大作。はるか彼方の宇宙空間に繰りひろげられる限りない夢とロマンの物語。リアリズムを越えた幻想世界が自由奔放に描かれた子供から大人まですべての人が楽しめる愛と冒険のスペースファンタジー。原案には石ノ森章太郎、SF考証には野田昌宏とエキスパートが参加している。

監督 深作欣二

(1978年 105分)

セルDVD:4,725円(税込)東映ビデオ

動画

「宇宙からのメッセージ」の動画です。

予告編

Youtube(ユーチューブ)の予告編です。映画本編もYoutubeで有料で視聴できます(300円から)。

予告編→

スタッフ

原案: 野田昌宏
松田寛夫
深作欣二
石ノ森章太郎
監督: 深作欣二
脚本: 松田寛夫
音楽: 森岡賢一郎

キャスト

ゼネラル・ガルダ [ ビック・モロー ]
ハンス [ 千葉真一 ]
エメラリーダ [ 志穂美悦子 ]
シロー・ホンゴー [ 真田広之 ]
ロクセイア12世 [ 成田三樹夫 ]
大公母ダーク [ 天本英世 ]
ヒキロク [ 成瀬正(成瀬正孝) ]
ビッグサム [ サンダー杉山 ]
補佐官 [ 中田博久 ]

解説

著書「大特撮 日本特撮映画史」(コロッサス編、朝日ソノラマ)より

『地球防衛軍』以来、次々と新しい超科学戦争のイメージをスクリーンに描き続けた東宝は、そこに他の追随を許さぬまでの特撮映像美を確立した。しかし円谷英二の死後、超科学兵器が画面狭しと暴れまくるこのテーマの特撮映画には空白期が訪れる。

東映が作り出す冒険とロマンの世界

ところが1978年になって、特撮映画の伝統も、歴史も、栄光も全く持たない、別の言い方をするなら全く自由にこのジャンルの映画を作り得る東映が、東宝とは全く別な形で、大宇宙を舞台にした冒険とロマンの世界を作りあげた。それが『宇宙からのメッセージ』である。

「里見八犬伝」をベースに"スピードへの挑戦"

「里見八犬伝」を下敷きに、宇宙の勇士達が悪の支配者を倒すという勧善懲悪のプロットを持ったこの映画。遥かな未来の宇宙をバックにした物語にふさわしく、様々な超科学兵器が画面を乱舞する。
その図をダイナミックに描くための特撮の課題。それは"スピードへの挑戦"であった。

監督「深作欣二」の個性

高速で飛行する宇宙艇はあらゆるカメラアングルで捉えられ、細密な編集操作で想像以上のスピード感をかもし出す。それはショットごとにパノラミックな構図を作り出していた東宝特撮とは全く異なるものだ。この映画のメガホンを取ったアクション派の監督、深作欣二の個性が、そこに色濃く現われている。彼一流の構図なき構図、アングルなきアングルなのである。 しかもそこにシュノーケルカメラの威力が加わった。

米映画「スター・ウオーズ」の影響

作劇・特撮ともに米映画「スター・ウオーズ」の影響を強く受けたこの作品では、ミニチュアに巨大感をかもし出すシュノーケルカメラとVTR合成の連動という世界初の試みが成され、大きな成果をあげている。

シュノーケルカメラとVTR合成の連動で迫力ある映像

宇宙の暴走族シローとアロンがそれぞれの小型宇宙艇で惑星ミラゼリアの地表を疾走して行くシーン、パトロール艇をまくために岩だらけの峡谷へ二機は突っ込んで行く。シュノーケルが峡谷のセットを疾駆し、セットの巨大感と動きのスピード感は息を呑むほどである。しかもカットが代わると、パトロール艇がもろに岩盤に激突する図。シュノーケルと操演、いわゆるピアノ線による吊りの効果が重なり、そこへ深作流の細かいカットつなぎが加わって、追いつ追われつの迫力が生まれている。

シュノーケルでとらえる大戦艦発進の図

やはりシュノーケルを使いながら、これと対照的なのが悪の支配者ガバナスの大戦艦発進の図である。地下格納庫から飛び立つ戦艦は、最初に仰角の構図で巨大感を予見させておき、上昇後は艦体の前進を艦底から超クローズアップで捉える。底部の複雑なメカニズムのひとつひとつがなめ尽くされるようにカメラに収まり、重々しく通過していく様子が画面いっぱいに広がっていく。

スピード感と巨大感

ここではシュノーケルが悠々たる巨大感を出すために使われているのである。こういったスピード感と巨大感は未来科学戦の様相を一層際立たせ、しかも宇宙の冒険活劇にふさわしい道具立てを、いやが上にも強調してくれるのである。

八人の勇士が集結、物語は佳境へ

やがてリアベの戦士と呼ばれる八人の勇士が集結して行く段を迎え、物語は佳境へとなだれこんでいく。すでに支配下に収めた惑星ジルーシアに次いで地球をも狙うガバナスと地球連邦軍の間に戦闘が繰りひろげられた。

舌をまく巧みな描写と空前の迫力

ミニチュアと呼べないほど巨大なガバナス戦艦と地球軍の母艦は、共に小型戦闘機を発進させて相手を攻撃する。地球軍の母艦は、小型パルス砲が砲台まで回転しながらパルスを連射。舌をまく巧みな描写である。それに母艦が攻撃を受け、炎上し落下するシーンでは炎が後方になびき、風を切る音と共に地面に激突。ミニチュア自身の重さのため文字どおり激突し、空前の迫力を生み出している。

いよいよクライマックス

そしていよいよクライマックス。リアベの戦列に加わったシローとアロンの小型艇が、攻撃の手を交わしながらガバナス要塞の動力炉へと突っこんで行く。シュノーケルとVTR合成の威力はここで最大限に発揮されるのである。

ミニチュアの動きとカットが生み出す臨場感

動力炉へ通ずる狭いパイプの中を超高速で飛び抜ける二機。パイプの複雑な外壁が飛ぶように後方へ流れていく。後を追うガバナス戦闘機群。二機の機内とミニチュアのスピーディな動きが激しいカットバックを重ね、めまぐるしくアングルは移り変わって行く。まるで見ている自分が操縦桿を握りしめ、画面から宇宙艇が飛び出してくるかのような錯覚に陥る。すごい臨場感である。

特撮技術を駆使した魅力あふれる超大作

ついに二機は動力炉に到達、爆破に成功し、脱出する。轟音と共に大要塞は崩れ去って行った。

『宇宙からのメッセージ』は東映がまさしく自在なイメージで描き上げ、魅力あふれる超大作となっていた。以前にアメリカからの要請で『海底大戦争』(1966)『ガンマ第三号・宇宙大作戦』(1968)に着手した経験を東映は持っている。しかし『宇宙からのメッセージ』は東映自身が企画し、はるかに雄大なスケール、はるかに進んだ特撮技術を駆使して完成させた画期的な超大作だったのである。

著書「大特撮 日本特撮映画史」(コロッサス編、朝日ソノラマ)より

あらすじ(ネタバレ注意)

200万光年の彼方、アンドロメダ星雲の惑星“ジルーシア”は、侵略者の手によって壊滅の危機にさらされていた。侵略者の魔の手を防がなくては、宇宙全体の平和さえも危ぶまれてしまう。ジルーシアの長老キドは、この危機を救うため奇蹟の願いをこめた8つの「リアベの実」を宇宙空間に放った。この実を手にした者だけが、宇宙の危機を救えるのである。

奇蹟を求め宇宙空間を漂うリアベの実は、地球植民地惑星“ミラゼリア”に住む宇宙暴走族のシローたちの手に渡った。さあ、立ちあがれジルーシアの危機を救うために!すでに侵略者の野望は、地球征服にまで及んでいる。運命の8つの実を手にした若者たちが立ち向かう先には、多くの困難と苦悩が待ち受けるが、彼らは希望を求め、壮烈な宇宙戦に挑んでゆく...。